弱みを見せられるからこそ強い!起業家のメンタルヘルスサービスを運営するcotree 株式会社cotree 櫻本社長

やさしさでつながる世界をつくりたいと語る櫻本社長。現代の社会の問題点とやさしさについてお伺いしました!

人物紹介:齊藤
ほっこりする世界観が好きな人。最近料理を始め、みじん切りを覚えた。

 

人物紹介:櫻本社長

広島出身。京都大学卒業後、ゴールドマン・サックス(株式会社アナリスト)に入社。2014年、株式会社cotree設立。起業家のメンタル支援や組織メンタルヘルスを中心に事業を展開中。

なんのために仕事しているかわからない経験から起業

起業のキッカケはなんですか?

メンタルの領域に興味を持ったのは私自身の睡眠障害の体験がキッカケです。

リーマン・ショック後の会社の雰囲気が非常に悪い中で辞めていく人も増えてきて、仕事も忙しいし、「会社で働く意味ってなんだろう」と感じて眠れなくなったんです。

そうだったのですね。当時病院には行かれたんですか?

クリニックにも行ったんですけど、2〜3分の診療で薬を出されて帰されて。メンタルの問題って症状は薬でおさまったとしても、そこに至った背景課題って薬で治るものじゃないじゃないですか。

重要なのは生き方や人生とか働き方、人との関わり方をどう変えていくか、向き合うことだと思うんです。

そこで、もっと医療以外のところでメンタルの問題に対してできることはないのかなと漠然と思ったのをきっかけに、事業を始めたんです。

ご自身の原体験からだったんですね。

証券会社にいた頃、人の顔が見えなくなる、という感覚がありました。会社を数字として捉えて分析したり、序列づけられて評価されたりしている間に、ひとりひとりの「個性」というものに鈍感になっている感じがして。

例えば、100億円経費をカットするために1000人リストラしましょうか、みたいに世界が抽象化していくことに、違和感を感じていたんです。

確かにそこは難しい判断ですよね。

評価基準がある勝ち負けの世界、人々に序列をつける世界にいる中で暮らしていると、勝つために頑張るとか、評価されるために頑張る、ってなりますよね。

けど、そうしているうちに誰のために頑張っているのか分からなくなったり、自分がやりたいことがわからなくなったり、相手の顔が見えなくなったりしていく。それって嬉しくないんですよね。

そうですよね。

序列とか勝ち負けにどれだけ意味を感じられるのかって人によると思うんですけど、私は顔が見える人の笑顔を見ながら暮らしていきたいし、そういう人が増えていったらいいんじゃないかなって思ったんです。

それがなぜメンタルのサービスとつながるかというと、メンタルの不調って、人の顔が見えなくなることとつながっていると思っているんですよね。

顔が見えないことが、メンタル不調の原因だということですか?

はい、そうです。例えば「人の気持ちを想像する力がなくなる」とか、「自分のやりたいことがわからなくなる」とか、「人のために何かをする意味を見失ってしまう」とか。

そうして誰かに「助けて」と言えないままに精神的に孤立してしまう。「助けて」と言えないと、自分の中でどんどん負の感情が育っていってしまいますよね。

孤立をなくすことでメンタルの不調をなくすということですか?

そうです。「優しい繋がりを作る」ってcotreeでは言っているんですけど。やさしさでつながる社会。経営理念にもなっています。

その優しい繋がりを失うと、人は苦しさを溜め込んだり、助けを得られなくなってしまって、メンタルに不調をきたすと考えています。

今の社会に潜む想像性の問題

以前、他の記事で「やさしさでつながる社会」の対義語が「お金でつながる社会」だって仰っていたじゃないですか。その部分を詳しく教えていただきたいです。

やさしさでつながる社会って1対1の顔が見える関係性でつながっているんですよ。人間が共感できるのは、想像力が及ぶ相手だけです。

人って、顔が見える、身近な相手のほうが優しくできるじゃないですか?

なるほど。確かに顔が見えないと身近に感じられなくなりますもんね。
そうそう。あとは現代の社会って交換経済じゃないですか。
交換経済?価値を交換して経済が成り立っているということですか?

そうです。同じ価値のものをお金と交換する。
また等価交換で成り立っている。
それって相手の顔関係なく、誰と交換しても同じ値段ですよね。

それはつまりどういうことですか?
例えば、5000円の値段がついているものっていうのは、誰が買うことになっても、5000円っていう社会じゃないですか。
はい
でも本当だったら、
私が家族に売るんだったらタダであげるかもしれないし、齊藤さんにあげるんだったら良い人だから3000円とか、あの人は嫌いだから6000円とかって何かあるじゃないですか。
なるほど!

物の値段って相対的な物だと思っています。
けど今は、その人の顔を排除して成り立っている社会になっている。
マーケットってそういうものですよ。

顔を排除するというのは?

誰がやっても同じということです。
なので、そのマーケットの中にいるってことは顔を見失うってことだし、それを取り戻すってことは相手に対する想像力が及ぶ繋がりを作っていく。
それが想像力の働く自分を作っていくってことだと思っているんですよ。

ん…?例えばどういうことですか?

顔が見えていて「この人こういう人なのかな?」「こういう関わり方をしたらこんな気持ちになるかな。」って想像するんです。

そうすると、この人のために何をしたらいいのかがわかる。それが優しくあることじゃないですか。

そういうことか!なるほど。

あと僕自身感じているのが、お金があると生活に余裕があって多少なりとも心にも余裕ができるので、ちょっと人に優しくできると思うんです。
でもそれ以外で人が人に優しくなる時に、必要なことって何だと思いますか?

今おっしゃった「余裕」は本当に必要だと思いますね。

それこそ自分のことで精一杯になると人の顔は見えないし、だから顔が見えることは本質なんじゃないかと思います。

相手の気持ちを想像できる状態である。そのために人に優しくできる余裕のある社会である必要があるし、自分自身が優しくできる状態をコントロールする必要もあるんです。

やさしさって何だろう?

櫻本さんにとって優しくするっていうのはどういうことなんですか?

優しくできるって本当に複雑なことだと思うんですよね。

「相手にとってよいこと」と言っても、刹那的なのか長期的なのか、欲望を満たすのか成長してもらうのか、色んな要素がある。知性と想像力が大切だと思っています。

やさしくあろうと思えば、白黒ではない曖昧さに耐えなければいけないことが多くあります。本人が決められるまで待ってあげるのもやさしさだと思います。

決断を迫らないということですね。
そうです。
相手が葛藤している時間をちゃんと待ち続けることです。待つって苦しいし、白黒つけたほうがいいじゃないですか。

でも本人が成長していこうとしていることに対して辛抱できる、優しく待てるってことも大事なことなのかなって思います。

受け手側は、すぐに答えを出そうとするよりも、相手の話を、弱さも汚さも含めて聴いて受け止めてあげるっていうのが、まず重要かもしれないですよね。

そうですね。
ちゃんと弱さを吐き出せる場所があるってことは大切なのかなって思うんですよ。

たとえば起業家ってそもそも弱さを出しづらい立場です。身近な人に相談しづらかったり、「強い経営者」を演じなきゃいけなかったりする。

起業家の4割は不安障害・適応障害の基準を満たすというデータもありますが、「強くあらねばならない」と人に頼れない人がメンタルの問題を持つリスクが高いのは当たり前のことです。

確かにそうですよね。ちなみにサービスとして、お客さんからはどういうお言葉をもらうことが多いですか?
やっぱり一番いただく言葉としては、「チームビルディングに役立った」ということが多いです。実はコーチングで一番改善するのは、人間関係なんですよね。
サービスでは具体的にはどんなことをされるんですか?

まずは性格特性のアセスメントを受けていただきます。今までの体験を振り返ってもらって「私はこういうことが得意で、こういうところが苦手なんだな」「こういう問題を抱えやすいんだな」ってお話を具体的にしてもらう。そうして自分の性格特性についての理解を深めていただきます。

で、逆説的なんですけど、自分を理解するのと他人を理解するのって表裏一体なんです。自分を理解することで、相対的に相手のことも理解することができる。

相手のことを理解できると、チームの中でコミュニケーションがしやすくなるし、想像力が働くようになる。

自分を知るから相手が見えてくるんですね。
ちなみに櫻本さんご自身は会社を立ち上げた時メンタル的に大変だったことって何かありますか?

あります。それもやっぱり人間関係ですね。

その時に「私もこのサービスに出会って内省が進んでいれば関わり方が違っていたかもしれない。」って思います。

価値観のすり合わせが上手くいかず「相手がなんでそんな態度をとるのかわからない」みたいな時期がありました。

スタートアップってそういう価値観のズレは多いと思うんですけど、そこからどのように改善されたのですか?

うちの場合は、新しいメンバーが入ってくれて雰囲気が変わったんです。

過去の反省を生かして「採用の時にちゃんとコミュニケーションが取れていなかった」とか、「理念共有できていなかったよね」とか課題に気が付いて、理念をきちんと言語化したり。

じゃあ何か特殊な制度があるとかってわけではなく?
制度は特にないですね。
でも、よく喋るようになったかな。コミュニケーションが増えました。
大事ですね。それは組織として意識したんですか?

はい、みんなで意識しました。うちの会社は全員がescortで使っている性格特性のアセスメントを受けて、共有しあっています。

自分には自分の、相手には相手のコミュニケーションの癖がある、と思うと自然とみんなうまく気遣いができるようになります。みんな本当にやさしいですよ。

起業家として

起業家というのは大変なことばかりだと思うんですけど、
「この瞬間が幸せ」とか、「これがあるから頑張れる」とかあれば聞きたいです。

圧倒的にユーザーさんが喜んでいる声を聞いた時、あとはチームが楽しそうにしているとき。それに尽きます。

素晴らしいですね。だいたいの会社さんって「お客さんが第一でそのために社員がいる」っていう順に考えるのかなと思うんですけど。

櫻本さんはどのように考えられていますか?

確かにね。でも、繋がってますからね。

よく言うのは「自分たちが『やさしさでつながる社会をつくる』とどんなに言っていても、社内がやさしさで繋がっていないのにそれを外に作ることはできないよね」って。

だから、お客さんに価値を届けるためにも、私達自身は「やさしさでつながる社会をつくる」というその価値の体現者でありたいって理念の中で言っています。

なるほど。素敵な環境なんですね!

今後会社としてはどんなことを目指していきますか?

私達が作る「やさしさでつながる社会」がもっと、広がっていけばいいなと思います。

あとは応援してくれる人を増やしたいです。社会に応援される会社になりたい。社会に対して価値を生んで、それを応援する人も嬉しくて、私たちはさらに応援に対して恩返しして、という流れをつくっていけたら。

お互いに与え合い、育て合えるつながりを広げていきたいです。

最後になりますが、未来の起業家に向けてメッセージをお願いします。

そうですね。
自分がどういう経営者になりたいのかを描けるといいなと思います。
経営者としての正解ってないじゃないですか。

今の時代、いろんな経営者の形があっていいはずなんだけど、これが正しいリーダーシップみたいなイメージを持って、そうならなきゃ、って焦っている起業家さんの姿を見ることがあります。

でも何のために起業するのか、なぜ起業するのか、どんな言葉をかけられると嬉しいのか。
なにを実現したいのか。

人それぞれ違うはずなんですよね。

確かにそうですよね。

そこを自分で理解したうえでそこに向かって行動できるか、やりたいことじゃないことをやっていないか問い続けてもらいたいなと思います。

例えばお金のために起業する人もいるし、社会的に評価してもらうために起業する人もいる。あとは、周りの人に喜んでもらいたいから起業する人もいる。

家族を守るためって人もいれば、とにかく人に勝ちたい、負けず嫌いの人もいる。

その人たちのリーダーシップの形は違うはずなので、自分のリーダーシップの形をちゃんと見つめながら育っていってもらえたらいいなと思います。

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