本日は自身もデイサービスの現場で働き、介護の将来へ熱い想いを持つ大熊がその真意をお伺いしました!
奈良県生駒市出身。立命館大学卒業。コンサルティング会社を経て、介護業界へ。株式会社日本介護ベンチャーコンサルティンググループ 代表取締役、株式会社ピースフリーケアグループ 代表取締役、一般社団法人全国介護事業者連盟 専務理事。
<主な役職>
●一般社団法人日本介護協会(介護甲子園) 戦略室室長
●一般社団法人日本デイサービス協会 理事長
●一般社団法人日本在宅介護協会東京支部 監事
●一般社団法人全日本業界活性化団体連合会 専務理事
その他、介護関連企業・団体の要職を歴任
生きる意味は自分で見つける
早速ですが、子どもの頃はどんなお子さんでしたか?
僕の住んでいた町はすごく治安が良くて、みんなが習い事や塾に行くのが当たり前だったので、僕も自然と塾に行っていました。
平和に過ごしていましたね。
大学時代はどのように過ごされていたのですか?
1、2年生の時はアルバイトしてサークルに行ってって感じで、普通の平凡な大学生活を謳歌していました。
でも健全な大学生の遊びって言ってもたいしてバリエーションもないですし、飽きてきまして。大学3年生の夏くらいから将来のことを真剣に考えるようになりました。
人生が変わったのはそこからです。
なので移動時間はずっと本を読み続けていました。
そこからいろんなことを考えていて、自分はどんな人生を送りたいのかなと。
お金持ちにもなりたいし、有名にもなりたいと思いつつも、それが生きる目的なのかというと漠然と何か違うなと。
そもそも自分は何のために生きているのか、人は何のために生まれてきたのかみたいな哲学的なことに思いが至るようになってきて、哲学とか思想の本ばかり読むようになりました。
それこそ迷路でした。
でも、それをずっと考え続けてきた時、20歳の時にフッと閃いた瞬間があって。僕なりに出した答えは「答えはない」ということでした。
僕は何かの使命を持って生まれてきたわけではないと。
あと、そのタイミングで当時のアルバイト先の後輩がバイク事故で亡くなってしまうという経験があったんです。
それも京都大学に行っていて真面目にコツコツ勉強をしてきた後輩で、きっと大学卒業したら幸せなエリート人生が待っているはずだったのに、このタイミングで亡くなってしまって。
それを見た時に人間の無情さみたいなものとか、また一人一人の命に変な意味ではなく、意味なんかないんだなと思いました。
僕だって何かの意思を持って生まれた訳でもなければ、逆に僕も明日死ぬかも知れないと。
でもそれをネガティブに捉えるのではなくて、何のために生まれてきたのかに意味はないのであれば、意味は自分で作るんだとポジティブな方に変換させました。
「じゃあ自分で生きる意味を決めたらいいんだ」と。
根がポジティブ思考なので、自分は何のために生きていこうかなと考えて、どんなことをしたいか、どんな人間になりたいかってことを、その当時いっぱいノートに書き出していったんですよ。
元々本が好きだったし、漫画も好きだったのでいろんなジャンルの本を読んで、漫画のキャラクターとか歴史上の人物とか世の中の人を見ながら、こんな人になりたいな、こんな人は嫌だなと、自分なりに思うことを書いていきました。
その時に決めた僕なりの生きる目的とは「とにかく自分の価値観とか美意識で最高にかっこいい男になろう」ということでした。
他の誰でもない、何を思われようが僕がかっこいいと思う人間でいられれば、最後振り返った時に幸せな人生だったと思えるんじゃないかと思って。
それからは迷ったことがほとんどないです。
迷った時は自分がかっこいいと思う男ならどういう行動決断をするかを常に意識すればいいだけなので。
じゃあ自分なりのかっこいい男ってどんな人なのかっていうと、
男に生まれてきた以上どでかいことをしている方がかっこいいと思ったのと、
その一方で、どんなに大きなことをしていたとしても自分のことしか考えられないのはダサいなと思って、誰かのために泣けるとか、人のために何かやっている人がかっこいいと思いました。
この2つは今に至っても思っています。
かっこいいですね。
介護業界へ
そんな時にたまたま目に留まったのが政治家の議員インターンシップだったんです。
政治家の事務所で働きながら、同時に佐藤大吾さんがやられていた若者と政治を結ぶ、議員インターンシップ斡旋事業のNPO立ち上げも手伝いました。
ITベンチャーブーム真っ盛りだったこともあり、学生ベンチャーとかベンチャー経営者と接する機会も増え、そういう人がキラキラ眩しく見えて僕の思うかっこよさみたいなところもあり、ベンチャーで働くことや起業も意識するようになりましたね。
その後、就職先はどのように選ばれたのですか?
毎日朝9時から深夜1時くらいまで働いて、土日も研修や勉強をしていましたね。
でもそれはそうで、新卒1年目が中小企業の社長に経営指導に行くわけですから、人の10倍も20倍も勉強しなくてはいけないわけです。
そういう仕事の基礎や経営の基本はもちろん、日々経営者の方と接する機会が多かったので色々学ばせていただきました。
あとはそこで3年やっていたので、その後どんな仕事をしていても辛いと思うことはないです(笑)
コンサルで学ばれた後、なぜ介護業界にいこうと思われたのですか?
僕はある程度のイメージとシナリオだけ決めたら、あとは運とご縁みたいなものだと思っています。
いきなり起業する前に、ベンチャーの事業会社でIPOを目指していくような会社でマネジメントをしてみたいと思い、とにかく伸びそうな会社や上場を目指している会社を探していて、そんな中で紹介してもらったのが、たまたま介護の会社でした。
話を聞かせてもらったらすごく面白そうだったし、先程も言ったように僕は「大きいことをやりたい、人のためになりたい」って気持ちがあって、介護福祉という仕事にすごく興味を持つようになりました。
会社選びもご縁があったという感じですね。
営業企画のような形で入社しましたが、初めての地方での施設が新潟にオープンするということで、最初はその施設の立ち上げ責任者になりました。
当時はまだ小さい会社で、住む場所も老人ホームの部屋が空いているから好きに泊まってくれって感じで(笑)
そのまま老人ホームに住み込んでおじいちゃん、おばあちゃんと一緒に生活をして同じお風呂にも入っていました。
当然毎日現場にも出て、住んでいるから夜勤スタッフの手伝いなんかもしていました。
それがある意味、現場での経験ですね。
介護業界のイメージを変えていく
その中で、斉藤さんの思う介護のやりがいとか、知って欲しいことってありますか?
その後会社もIPOして20代で上場企業の役員になることができ、売上も当初2億ぐらいだったものが7年間在籍して130億くらいになり、かつ子会社13社程の社長も任せてもらえました。
僕のやりたいことであった「ダイナミックな大きなことで、かつ世の中のため人のためになること」ができて、やりがいを感じていましたね。
僕は介護の仕事っていろんな意味でいい仕事だと思っています。
でも周りの人に介護の仕事をしているって言うと「大変ですね、頑張ってますね」みたいな。
世の中の介護に対する印象は「きつい」「汚い」「給与が安い」いわゆる3Kですよね。
確かにこの要素があるのは事実ですし、人の命を預かるという特殊性もありますが、どんな仕事にだって大変な面といい面はあるはずです。
介護は本当に人のためになれる仕事で、感謝もされるし、お年寄りの方と接することで学ぶ機会もたくさんあるし、人間力やコミュニケーションスキルも身につきます。
産業としても成長するわけだから、拡大マーケットで成長産業でもあるし、介護の仕事に就いたから今の僕があると思っているくらいこんなにいい仕事はないと思っています。
なので介護のポジティブ情報や素晴らしい情報を発信していきたくて、こういった団体活動や協会活動にも力を入れていくようになってきたという感じですね。
介護職って本当に良いところや学べることってたくさんあるじゃないですか。僕も普段からすごく感じていて、なので今日はどうしてもお話を聞きたくてお伺いしました。
今後、介護がどうなっていって欲しいとかビジョンみたいなものはありますか?
誰もが介護を身近に感じる、安心の老後生活の実現へ
介護は特に人手不足で全く人が集まらなくて、そのひとつの原因が3Kのイメージがついていることだと思うので、そのイメージを払拭するような活動をライフワークとして行っています。
それから「全国介護事業者連盟」というものをやっていて、介護業界における日本医師会さんのような組織を作りたいと思っています。
介護には社会保障の要素も強く、年間10兆円規模の社会保障費が介護保険でかかっていますが、これから高齢者がますます増えて労働人口が減っていく中で、日本の社会保障制度はもたないんじゃないかなと。
僕はいろんなきっかけから介護業界に入りましたが、現場も衝撃は多かったんですよ。
認知症の方も初めて目の当たりにしましたし、家庭崩壊している家もたくさん見てきて、それも日本全国に山のようにありました。
僕は介護の仕事に就くまで、日本は自由で平和で楽しい国だと思っていましたが、実はそういう社会を作ってくれた先人達が介護状態になったら人としての尊厳すら守られないような環境にあることにすごく衝撃を受けました。
さらに今後の人口減少を見ていくと、もう僕の中では介護現場は崩壊するんじゃないかという強い危機感があって、これはなんとかしないといけないという思いで、こういう社会的な活動に重きをおくようになりました。
介護は3年ごとに制度の見直しがされていくのですが、現場の声がなかなか届いていないという現状を感じています。
介護にも団体がないわけではなくて、むしろ小さな団体はたくさんあるのですが、それぞれルールも利害も違うので、法人毎やサービス毎に団体ができている乱立状態になっていて、結果一つ一つが小さくなって政治力が効かなくなっています。
僕は今この垣根を超えて団体を作ろうということで、この「全国介護者事業者連盟」という組織を全国の介護事業者の方々に集まってもらって活動している状況です。
データ:全国介護事業者連盟 HPより
介護はマーケットという視点で考えれば、国内随一の成長マーケットとも捉えられます。
ヘルスケアの領域も含めた一大マーケットにしていけるであろうし、今後の日本経済の発展を牽引していくと考えています。
政府でも日本の介護ヘルスケアをアジアに発信していく経済圏を作ろうという構想が掲げられているので、僕も全面コミットしていこうという意味の産業化。
また、決してお金儲けという意味ではなくて、健全なサービス競争原理が働き質の高い介護事業者が存続できる環境、イノベーティブな発想に基づく商品・サービスを生み出すという意味での産業化を考えています。
生産性の向上は、福祉で生産性というとドライな効率化を追求していくような捉え方をされてしまいがちですが、そうではなくて質を維持していくためにどう業務の生産性を高めていくか。
外国人人材の採用や、ITやロボット、AIといったテクノロジーを融合させていくといった取り組みをやっていかなくてはと思っています。
データ:全国介護事業者連盟 HPより
これが僕らの目指している姿で、誰もが安心できる老後、誰もが介護を身近に感じる社会を作っていきたいと思っています。
結局介護に興味を持っている人ってほとんどいないですし、いざ何かのきっかけがないと興味を持たないというのが現状です。
でもこれから超高齢社会が加速するのであれば、誰もが介護への最低限の知識は持ち、高齢者を支えられる社会を実現できればと思います。
医療と並列になれるような業界にしていく、そういう業界発展の活動に特に今は注力しています。
従業員不足は働くスタッフはもちろんのこと、サービスを受けている利用者様の負担にもなります。
そういったことを考えても、生産性の向上や介護への関心や知識を高めることを早期に達成して、誰もが安心して歳を取れる社会にしていきたいですよね。
最後に学生や起業を目指す方にアドバイスをお願いできますか?
若いうちはわからないことばかりだし、失敗も間違いもたくさん経験して、いろんな人に出会って刺激を受けるといいと思います。
ただ違和感を感じながら、周りがこうしているからという流れに従う必要は絶対にない。
自分がこうありたいと思う通りにやってもらいたいし、その軸を作った中でやりたいことをやれればいいんじゃないかなと思います。
本日は大変勉強になりました!