AIの分野では、深層学習(ディープラーニング)が有名ですが、深層学習は学習に大量のデータと大量の計算を必要とします。QuantumCoreは業界で初めてリザーバコンピューティングという技術を使い、深層学習の性能を超える多変量時系列処理ソリューションの開発に成功しました!
そもそもなぜこの分野に興味を持ったのか?今後の展望は?秋吉社長にお話を伺いました。
深層学習の研究を続け、2018年に株式会社QuantumCoreを創業、代表取締役CEOに就任。現在は3児の父親でもある。
夢の技術!リザーバコンピューティング
早速ですが、事業内容について教えてください。
もともと物理とか複雑系力学と呼ばれる分野で研究されていたものを、AIの分野に転用して独自開発されたのがQuautumCoreさん。
ベッドに取り付けてその人がどういう姿勢で寝ているのかを把握することによって、ちゃんと寝返りを打てているのか、うつ伏せのまま死んでしまっていることのないようアラートを出せるような取り組みを介護ベッドメーカーさんと行ったりしています。
<独自のリザーバコンピューティング技術Qoreを用いたデータ分析活用事例>
(引用:株式会社QuantumCore HPより)
というのも、画像認識以外はビッグデータがなかなか集まらないということで、適用しづらいという現状があります。なので、画像認識以外のところにはチャンスがあると思いました。今分かっているところで言いますと「振動センサー」や「音」といったものが弊社は特に強いです。
深層学習の研究にのめりこむ
その当時(90年代)まだGoogleもなくYahoo!もリンク集だった頃、初めてインターネットの検索エンジンに触れて「これはすごい!」と感銘を受けました。
その後、大学院では自然言語処理という分野を勉強しました。
「検索担当をやりたいです」と言って新卒でエキサイトに入社しまして、その後は自然言語処理の技術や高速検索のアルゴリズムを使った新規サービスに取り組んだりしていました。
2014年にはスタートアップスタジオを実践していたベンチャーキャピタルのMistletoe株式会社に転職して、深層学習を活用した音声認識や画像認識などの研究開発をしたり、個人でも深層学習についての勉強会を主催したりしていました。
特に力を入れていたのは「少量データで高精度を実現する研究」で、これは現在にも繋がっている部分です。
これを相当早いGPUマシンにかけて回しても、なんだかんだ言ってまともな精度を出すのには数日かかってしまうんです。一度中間で確認して何となく目星を立てて、いけると思って進めても、数日待って結果を見てみるとボロボロということもよくありました。
そういうのがずっとあって、波形をもう少しネイティブに時系列に扱えて、かなり高速にリアルタイム学習ができて、商業データで何かできるものはないかなと、ずっと考えていました。
いろいろ試行錯誤を繰り返し、少ないデータで深層学習で音声認識が達成できたという成功体験があったので、この分野はいけるんじゃないかと何となく直観としてありました。
その後にリザーバコンピューティングという分野に出会いました。
これは実は、機械学習をやっている人にはなかなか素直に受け入れられない分野なんです。
深層学習は学習に大量のデータと大量の計算を必要とします。
でもリザーバコンピューティングは学習時の中間層の重み更新が不要となる特徴があり、学習時の計算に必要なデータ量や計算力を著しく節約することができるんです。
こんなの普通できるわけないと思うんですけど、私としてはその前に深層学習の研究をしていたときにそういったことができるということを何となく分かっていたし、成功体験もありました。
自分でもいろいろ試してみたら、本当にこれはいけるかもしれないと思い、今回の起業のきっかけに繋がったというところなんです。
とは言え、まだ当時は確信的なところはそこまでなくて、少量データでリアルタイム学習はできるし筋は良いなと思ったものの、深層学習に比べて精度を出しにくいという課題もありました。
でも私は無鉄砲にも会社を飛び出したのです。
リザーバコンピューティングに懸ける!
起業するネタがあったので何となく漠然と会社を飛び出してしまったのですが、でも「子ども3人抱えて無一文はやばいぞ!」と(笑)
どうしたものかなというところで、全然確定的なこともなかったのですが、CEATECというイベントに出展してみることにしました。
(引用:CEATEC公式サイトより)
そこでデモが必要だということになったのですが、その時点ではまだ何も決まっていなくて。
どうしようかなと思って死ぬ気で1週間くらい考えたら、意外とブレークスルーできてしまったんです。それで当時はCEATECの会場でこんなすごいものを作りましたって言っていましたが、内心はほっとしている状態でした(笑)
意外とうまくいって、そこからですね。おかげさまで50社くらい名刺交換をさせていただいて、そこから繋がった大企業さんと累計14社ほど、プロジェクトを組んで取り組みをさせていただいていると、そういった流れになります。
そんな印象はなかったので、面白いです。
今のAIブームも検索エンジンが形を変えて、人が求めている情報を少ないキーワードなり、少ない情報を与えると、大きな自分の欲しい情報として返ってくるというところは大筋は変わっていないなと思うんです。
子どもの頃に感銘を受けたところから、最終的にはそこで起業が決まったというところには何か変わらないものを感じます。
機械いじりが大好きな科学少年!小学生からコードを書く
ところで、秋吉さんはどんなお子さんだったのですか?
フルーツに銅板を差してライトを付けると光が付くフルーツ実験をしたり、親戚のお兄さんに電子工作キットを買ってもらって、一緒にはんだ付けをしてライトを光らせたり、モーターを回して遊んでいるような子どもでした。
小学校に上がってからも機械いじりは好きで、近所の女の子を招いておままごとをするのかと思いきや、面白いものを見てよと言って、時計とかオモチャを分解して、モーターを回して見せびらかしたりとか、そういう子どもだったんです。
勉強のほうはどうでしたか?
ただそこで見つけた隙間時間を縫って、廃材置き場からガラクタを集めてきて分解して部品を取り出して遊ぶとか、そういうことをやっていました。
パソコンが欲しいと親にずっと言っていたのですが、買ってもらえなくて。
でも小学校3年生のときに、親戚が「これ持って帰っていいよ」と中古のパソコンをくれたんです。パソコンと言っても、既に20年遅れの記録メディアで、カセットテープで起動するとベーシックというプログラミングの画面が起動するだけで、ゲームソフトも何もない。
当時はインターネットもないし、図書館に行くしかないんですけど、そんなマイナーな機種で20年前の文献なんかないんです。だから取扱説明書の構文一覧を読んでコードを書いたり、プログラミングが載っている昔から続いている雑誌があるんですけど、それを参考にして自分の機種用に移植をしてみたりして遊んでいました。
だから小学校3年生のときから、今に至るまで、ほぼ毎日のようにコードを書いているような人生です(笑)
ワクワクするようなプロダクトを作っていく
我々がまずパイオニアとしてやりながら、世界に広めていきたいなと考えています。
というのも、リザーバコンピューティングはまだあまり知られていなくて、競合もいない状態なんです。市場が盛り上がっていないので、当然ながら、何それ?という感じになってしまいますので、業界として盛り上げていきたいと思っています。
そして事業会社さんにもワクワクしていただいて、こういう面白い会社さんと取り組みたいなと思っていただけるような会社になりたいと思っています。
その上でワクワクするようなプロダクトを一緒に作り上げていくと、そういったところを将来は考えています。
将来こうなるのが面白そうだなってワクワクしながら仕事をするのはすごく楽しいですよね!
ちなみに、秋吉さんが仕事をする上で大切にされていることって何かありますか?
ですので、仲間と一緒に何かを成功させていきたいと考えています。
すごい才能を持っている人は重要ではあるんですけど、才能も含めて、方向性ですね。
この人面白いなとか、この人と一緒に仕事を続けていきたいなと思う人と組むことが一番大事です。弊社のメンバーもユニークなメンバーが多くて、例えば、ヨーヨーの腕前が達人級でYouTubeに出ていたりとか、イギリスの大使館で英語で落語をやっているようなメンバーもいます。
メンバーは大事です。
最後に、これから起業を目指す人だったり、若者に向けてメッセージをお願いします。
それから小学校3年生から毎日コードを書いているという秋吉さん。
「好きなことをやり続ける」これってすごくシンプルだけど、これほど本質的な生き方はないと思いました。素敵な取材をありがとうございました。